第一章 *冬*

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 今日は自転車を使わずに、歩きで一人の時間を楽しむ。合わせて音楽も静かなメロディー重視のプレイリストを選択した。イヤホンも少々高額の、防音性が優れた日本製。コードレスは一回購入してみて、駅のホームに落としたという典型的な日本人の失態をやらかしたため、有線イヤホンの支持者である。  凪のアパートの近くには、遊歩道を挟んで、それなりに大きな道路がある。  車の通りはさほど激しくない。運送業者のルートに入っていないためか、トラックなどの大型車も都心ほどは見かけない。行き交うのは一般乗用車が大半で、だから凪は、その道路を進んだ先にある、幅が広めの歩道橋をわざわざ渡り歩く。それから向こう側の道に着いたY公園へ行くのが、毎日のルーティーンとなっている。  凪は歩道橋を渡るのが好きだ。  そう発言をしたら、変わった趣味をお持ちですねと返答されるのがわかっているため、何も感じていないようにクールな顔で通り過ぎるけれど、少しだけ少年心が弾む。  凪はわくわくしている。
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