第二章 *早春*

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「いや、向こうから告白された。これ俺の自慢なんだけど、自分から行ったことないのよ。絶対相手に惚れられるの。みんなそうだったし」  いったん間が空き、次に新田の台詞が降ってきた。 「たぶん、あんたが哀れだからじゃない?」 「…………は?」  凪は鋭い目で凄んでみせた。関係性ができあがってる新田の前では効果などないが、たやすく「哀れ」と言われて受け入れるほど、自分は落ちぶれてないと凪自身思っていた。  新田は凪のにらみを正面から受け止める。そして続けた。 「女は、あんたを見ると愛情を与えたくなっちゃうのよ。母性っていうか、慈愛の心っていうか。この人孤独で震えてるから、上着くらいかけてあげるかなあ、みたいな感情だと思う。女は孤独を読み取るのがうまいから」  へえ、と凪は淡白な返事をした。新田から分けられたウインナーを頬張り、締めのスープを半分ほど飲む。インスタントの安っぽい味が、腹にしみた。 「対してあんたは、受け入れてるふりして、求めてる。先にまゆちゃんに恋したのは凪の方だよ」 「何で断言できるのさ」  だって、と新田は言いかけ、口をつぐんだ。数秒気まずい沈黙が流れる。
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