第二章 *早春*

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 足がY公園の方角へ向かっているのは自覚していた。  新田にかけられた言葉を反芻しているうちに、凪は知らずと電車に飛び乗っていた。各駅停車、青梅行き。  吊り革に掴まる。窓越しに、高速で流れ去る民家が見える。一つ一つの家庭に、それぞれの家族が帰って、食事をとって眠りについて、朝になれば家を出ていく。それが当たり前のようにくり返され、これからもくり返されていくと信じて疑わない。  胸の奥がきゅっとなる。  自分が何を欲しがっているのか。  渇望しているものを自覚してないほど子どもではなかった。けれど手を伸ばせる容易さでもないことも、充分承知していた。  外の景色はだんだん中規模のビルやショッピングセンターに移り変わっていく。目的地が近づいている。行きたくないのに、行きたいと望んでいる。  出会わなければよかったとさえ感じていた。  蝶野まゆを、知りたくなかった。  電車は駅に到着する。  懐かしい街並みと、どうにも垢抜けないホームの外観。  凪は足早に階段を下りる。エスカレーターを使うのもじれったかった。    Y公園には先客が何名もいた。知らない間に有名スポットになったようだ。夜の初めの時間帯だからか、あの時散歩をしていた季節柄、たまたま空いていただけだったのか。
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