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数人で台詞の掛け合いを練習する役者の卵たち。敷地内をジョギングするランナー。ブレイクダンスを習得しようと励む若者。夢を追う人間たちで満ちたY公園の、奥の方の窪まった場所――まるでステージのように見える広場だ――そこに、彼女を見つけた。
初めて会った時と変わらない、強くしなやかな踊り。圧倒的なリズム感を見せつけるような身のこなし。自身の生きてきた道程を誇りに思う者だけが持つ、エネルギッシュな魅力があふれていた。
あの頃の、怒りに任せた動きではなかった。
美しかった。
凪は、一歩ずつ近づいていく。
まゆがこちらに気づく。
表情を硬くさせる彼女に、努めて穏やかな口調になるよう、話しかける。
「踊ってたんだ。……まだ」
「うん」
まゆはこくりとうなずいた。
本当は、お前の動画も欠かさずチェックして、見守っていたんだよ、なんて台詞は言わない。自分が彼女の立場だったら、そんな薄気味悪い行為をする男など願い下げだ。
凪とまゆの間に、沈黙が下りる。
そのまま幾秒か過ぎ、まゆが口を開いた。
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