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「何か、変な感じ。どれくらい会ってなかったかわからないのに、あんたを目の前にすると自分が自分じゃなくなる」
「……と、いうと?」
それとなく聞くと、厳しい叱責が飛んできた。
「喧嘩したんじゃないの、私たち? そのままどっちも連絡しなくて、自然消滅だって思って……」
「うん、俺も思った」
「じゃあ、どうして来たの?」
「わからない。俺にも説明がつかない」
まゆは深いため息をついた。落胆の色と期待のまなざしが込められた反応だった。
「やめるの、私」
「…………え」
一瞬、自分の耳を疑った。
だが間違いなく、蝶野まゆはそう言った。
「夢を追うのはもうやめる。ダンスは趣味で続けることにした。就活しなきゃ。来年三年生だし」
「ハタチじゃん」
息せき切ってこぼれ出すわけのわからない感情に押されて、凪は反論した。弱気になる彼女の顔を見るのが我慢ならなかった。
「キラキラの成人じゃん。ピチピチの女子大生じゃん」
「……バカなの? その世界じゃもう遅いんだよ」
「小便くさいガキなんか相手にするな。色気もへったくれもねえ小娘になんか真似できない、お前自身の魅力ってもんがあるだろ」
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