第二章 *早春*

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 まゆの瞳は冷え切っていた。凪が強気な姿勢を見せれば見せるほど、かえって表情が暗くなっていく。 (何でだよ)  一向に理由が見当たらず、凪は感じたことのない不安と憤りを抱いた。 「やたらと私の肩持つね」  まゆは拗ねたように顔をそらす。 「そりゃあな、恋人だし」  当てつけのように言ってやると、今度こそ重い空気が流れた。凪が最も苦手とする、張りつめた意識のせめぎ合いが、肌に痛かった。 「何か言えよ」 「凪にあげられるものは、もう何も残ってない」 「……は? 何だよそれ」  すごむ勢いで、強く尋ねる。まゆは沈黙を貫く。  埒が明かない。凪は正直な気持ちを伝えることにした。 「残念だな。お前には……さ」  いざ言葉に出すと、胸にちくりと空しさが刺した。 「パフォーマンスアートの精神を感じたのに」  彼女がこちらに顔を向けた。  すがるような瞳と、その奥に隠れる、凪への熱い情欲が見て取れた。  何かを必死にこらえている。まゆの中から強い思いが熱となって放出されている。 「そっちこそ」  まゆは泣き声に近い声色で訴えた。 「何でも話してほしかったのに」 (――――ああ)
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