3人が本棚に入れています
本棚に追加
隠しごとはなぜバレるのだろう。
「夜に、眠れないのは……。いつから……。子どもの時からずっと、続いてるなら、どうして病院に行かないの……? 私じゃ癒せないなら、今になって会いに来ないでよぉ……」
まゆは子どものように泣きじゃくっていた。顔を覆った手のひらがひどく震えている。
凪は知らずと空を見上げた。
冷たい風。暗闇を灯す常夜灯。今日は晴れてるのだろうか、星がチカチカと瞬いている。こちらの都合のために天気は悪くなってくれず、肩を濡らす雨は降らない。
「毎日飲んでるあれも、教えてくれない……」
消え入りそうにつぶやいたまゆの台詞に被せるように、凪は告白した。
「生姜スープなんだ」
途端、まゆはきょとんとする。無防備な表情を、ああ、可愛いと、素直に思えた自分に驚きを感じる。
凪は続けた。
「寒くなったら、あそこの自販機で発売するんだ。温かい飲み物で、睡眠作用の効く生姜がすげえいっぱい入ってんの」
「睡眠作用……」
「うん。……俺はね」
幼少の頃の、自分に背を向けている両親の姿が、脳裏に浮かんだ。
「睡眠障害なんだ」
夜は、凪にとっての避難場所だった。
最初のコメントを投稿しよう!