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定職にも就けない、一日の生活を生き抜くことがやっとの、低賃金労働者の。
「この先どうなるかわからない。でも今、凪の過去の一部を知れてよかった。凪のことが見えた気がして、嬉しくなった。もっと教えてほしい。私にいろいろな面を見せて」
どんな言葉を伝えればいいのか、今まで凪は熟知しているはずだった。こう返せば相手は気持ちよくなるだろう、納得するだろうと、人の感情を受け取るのが得意だと思っていた。
口ごもる自分は、正直かっこ悪い。取り繕う術も忘れた。
「まゆ」
「ん?」
目の前の女は柔らかく微笑む。どんなタレントよりも美しく。
「キスしたい」
まゆは笑った。心から幸福そうに。
「恥ずかしい台詞だね」
「うん、俺もそう感じる」
互いに笑い合った後、甘くこそばゆい雰囲気が流れた。
彼女が目を閉じる。
凪は一歩ずつ近づいていった。
相手の身体にふれた。
自分とは違う柔らかな肌触り。手を握った。細くて長い指だった。俺のよりずっと小さいんだなと、心に疼く密かな色欲を感じた。この上ない愛情も。
まゆの手を握りしめたまま、唇にそっと、自分のものをあてがう。
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