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「うちの事務所に所属してみませんかって」
「スカウトか、なるほど」
「私の動画、見てくれたの。それで、オーディションを受けさせたいから、うちと契約を結んでほしいって先方が」
「どこの事務所?」
「Aプロダクション」
「中規模の芸能事務所だな。まゆ、やったじゃん!」
「ありがとう。すっごく嬉しい」
まゆはほっとしたように声を弾ませる。
「凪が喜んでくれてよかった」
「自分のことのように嬉しいよ」
思えばずいぶんと素直になったものだ。自分で発言しながら笑えてくる。
「それでね」
まゆが続けた。
「凪に、会いたくなって。直接話せるかな?」
声色から、そこはかとない憂いを凪は感じ取った。手放しで喜んでいるかと思いきや、恋人は何やら気がかりな案件でもあるらしい。
「わかった。今どこにいる?」
「商店街抜けたところの並木通り」
「すぐ向かうよ。確か近くに児童公園があったから、そこで話そう」
「うん。待ってる」
場所を確認し合い、まゆの方から電話を切った。
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