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二人は顔を離し、しばらく恥ずかしそうに笑い合った。
まゆが凛とした表情を見せる。
「私は、ステージに立つ」
迷いも何もない、覚悟だけを背負ったパフォーマーの瞳。
「芸術には永遠が住んでる」
「――うん」
俺も、それが答えだと思うよ。
心の中でまゆに返事をして、凪は、彼女を自宅まで送り届けた。
「アドレスは消さないで」
別れ際、まゆは自分の髪をさわりながら、それとなく凪に告げた。
「どうしようかなあ」
凪はからかい気味に返事をする。和ますつもりで言っていることも互いにわかり切っている。
じゃあね、また。
伝え合い、二人は別れた。
また明日会えるかのような、他愛のない挨拶だった。
蝶野まゆと言葉を交わしたのは、その日が最後だった。
*
スタジオから出ると、むせるような暑い風が五感を刺激した。梅雨前線も次第に弱まり、晴れる日が多くなったからだろう。季節の色合いは雨季から夏へと移行し始めている。今日は室内にこもりきりの作業だったため、外の空気を吸うといくらかさわやかな気分を味わえた。
「五月女さん、この後どうします?」
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