第一章 *冬*

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 これ見よがしに音を立てて飲み物を購入し、ベンチのそばに立って、半分ほど中身を飲み干す。  相手もこちらの存在に気づいているのだろう。あからさまに不審者を見るような視線を感じる時があった。  彼女の踊っているダンスのジャンルは、凪にはよくわからなかった。  ただ、動きは軽やかだなと思った。  月並みな言葉で表すなら、重力を感じさせないとか、そういう「ダンスのうまい人」に当てはめられるのではないかと、凪は考えていた。  しょせん自分は無知だが。  気が済むまで品定めをして、凪は、飲み干した缶をゴミ箱に捨てた。    *  Y公園は、知る人には知られている「穴場」らしい。  敷地が広く、一歩中に入れば奥の方に円形のだだっ広い自由スペースがある。周りは木々の植え込みなど、視界を外から遮るもので囲われており、外界の音が聞こえにくくなっている。情報に早い者がさっそく口コミでも広めたのだろう。休日には、Y公園はアマチュアダンサーや役者の卵たちの格好の練習場所とされていたようだ。
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