第一章 *冬*

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 何がどう違うのか、うまく説明できない。凪は踊りの素人だ。専門の知識はない。けれど彼女の佇まいが、全身が、何かをひどく糾弾しているように感じられた。  その分、踊りに力強さは出た。しなやかだった手の振りは決めるべきポジションで決められるようになってきたし、足さばきなどアスリートのように雄々しく、格闘技の型を見ているようだ。 (泣けるねえ、技術を身につける努力は)  興味半分、冷やかし半分で、凪は彼女の動きを逐一採点し始める。  四肢の伸ばし方が綺麗だ。初めて見た時から思っていたが、音感が潜在的に備わっているのだろう。振りがずれることがまずない。そして動きが早い。アップテンポの曲にも難なくついて行ってる。位置移動が正確だ。柔軟体操もきちんと続けているのだろう。素人が簡単に手を出せないポージングや、バランスのとり方が難しいサビの身体使いも見事だ。隙のない美しさというべきか。見る人に完璧なダンスナンバーを魅せつけてやるという気概が、ビリビリと伝わってきた。  痛いと感じるほどの視線の強さだ。  いっそ焼かれてしまいそうなくらい。 (圧が強いタイプのダンサーなんだなあ)
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