第一章 *冬*

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 言われている意味がわからなくて、凪は呆けた。動揺している自分の顔はさぞかし間抜け面だろう。いつもそそくさと逃げ回っていたツケがここにて回ってきたのか。  返す言葉が見つからず、凪はしばらく挙動不審に目を泳がせた。 「ずっと見てたんですよね? 客観的に見て、私のダンスに直した方がいいところ、ありますか」 「いや、俺、素人だし……」 「意見を聞きたいです」  人の話を聞け、と思わず言い返しそうになるのをぐっとこらえ、凪は何とか適切な表現を探す。 「直すところっていうか、変わったなあっていうか」 「どこが変わったと思いましたか」 「ええと」  落ち着け、下手なことを言ったら逆上されるぞ。特にこういうタイプはそれとなく言葉遣いを濁した方が後腐れなく終わるもんだ。  長年アルバイトを渡り歩いてきた勘が、さわらぬ神に祟りなしと脳みそに警告していた。  適当なこと言って早く逃げろ。 「何に対してそんなに怒ってんの?」  沈黙が下りた。  相手の時間が、完全に止まっていた。目を見開いたまま、そこから微動だにせず突っ立っている。
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