第一章 *冬*

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 凪がびくびくと反応をうかがっているうちに、彼女は顎に手を当て、眉間にしわを寄せ始めた。 「いや、こんな素人の意見気にしないで、芸術性のままに弾けて踊った方がいいっすよ」 「いえ、参考になりました」  彼女はきりっとした顔で凪を見つめた。 「せっかくなので、これからもここに来て私のダンスを見てくれませんか」  非常事態になった。  どうしていいかわからず、余計に混乱する。 「……どれくらい?」 「できれば毎日」 (何でこうなるんだよ)  凪は内心、舌打ちしたくなる心を懸命に抑えつけていた。 「毎日外に出なきゃなんねえの……?」 「はい」  相手の瞳は爛々としていた。獲物を見つけて狩猟本能が刺激される肉食動物のようだ。 「私の観客になってください」  数秒、沈黙せざるをえなかった。  蛇に睨まれた蛙のようだ。自分って小動物だったのか。ずっとハンターだと思っていたが。 「蝶野(ちょうの)まゆといいます」 「はあ」 「名前を教えてください」 「俺?」 「私も名乗ったので」  教えろ、とばかりに蝶野まゆは強い視線で訴えた。 「……五月女凪です」
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