2.奇妙な体験

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 だが幸せな休日は瞬く間に過ぎ去り無慈悲な月曜日がやって来る。楽しい日曜日も夜になると憂鬱でしかない。ああ、もうすぐ月曜がやってくる。学校に行かなきゃ、そう思うだけでじんわりと涙が浮かんだ。この世から月曜日なんてなくなればいいのに、真剣にそう考えたぐらいだ。今思えば学生生活なんてあっという間に過ぎ去っていくのだからほんの少し我慢すればいい、そう思える。だが小学生の私にとって学校で過ごす一日は気が遠くなるほどに長く、一年なんて永遠に感じるほどだった。年を経るごとに一年が短く感じるようになるのはなぜなんだろう。子供にとっての一年は大人にとっての一年よりも数倍長い。それだけ吸収することが多いからだろうか。楽しい出来事も悲しい出来事も真正面から受け止めてしまうからだろうか。明日もまた男子たちは私をからかい、女子たちはニヤニヤ笑いながらそれを眺めるのだろう。私は布団に入りため息をついて目を瞑った。 ――るるる。るるる。  ああまただ、と思う。白いふわふわしたものを見るようになってしばらくすると、眠る前に不思議な音が聞こえるようになっていた。音、ではない。声、だ。(かす)かに響く優しく甘やかな女の声。 ――るるる。るるる  普通に考えれば飛び起きて両親に泣きつくような出来事なのだがその声を聞いていると不思議と落ち着く。小学校に上がってからひとりで寝るようになった私は当初なかなか寝付かれずにいた。夜中、泣きながら両親の寝室に飛び込んでいったこともある。その度に深いため息をつく母を見て私はひどく後悔し、ごめんなさいと言って自分の部屋に戻るのだ。だがこの声が聞こえるようになってからはすぐに眠れるようになった。 「美恵ちゃんようやくひとりで寝られるようになって。えらいわね」  母に褒められた時、不思議な声の話をしようかと思って止めた。なぜかはわからないが言っちゃいけないと思ったから。
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