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ひとりひとり
朝起きて、君が隣にいたり
鳥のさえずる朝を感じたり
星空みたいなカーテンを開けて、君がまぶしそうに目をほそめて、
それだけでよかった
いつもよりすこしだけ空に近い場所で
ふたり好きな音楽を流して
へたくそなステップを踏みながら
鍋にお湯を沸かして、君と並んで、
それだけでよかった
いつもよりすこしだけ月に近い場所で
君に起こされて見た朝焼けを
君が指差した下弦の月を
君の覗き込んだ夕空を
君と見下ろした水面を
ふたり好きな小説を語らって
静寂の午前二時を歩く
暗闇に煌々と佇むコンビニに、君と虫のように、
それだけでよかった
いつもより穏やかな時間のなかで
君の見つめるその瞳を
君が重ねる手の硬さを
君が言葉を紡ぐ唇を
君と感じたはずのしあわせを
ふたりで観た映画に出てきた
あの子みたいに
「君に似てるね」嬉しそうに笑った
ネオン街みたいに
あのふたりみたいに
永遠に君といられたら
あの日ファンにサインを贈った
彼みたいに
あの日彼からサインを貰った
ファンみたいに
あのふたりみたいに
永遠に自分のものにしたい
君のベッドで首を絞めて、
君の家の前の川に深く沈んで、
君の部屋から飛び降りて、
君の前で
君の目の前で
こんなクソみたいな感情も、
死にたいと思う弱さでさえも、
そっと寄り添って、抱き締めて
そっと立ち会って、つつみこんで
静かにそこにいてくれるなら
静かに苦しんでくれるなら
静かに涙を流してくれるなら
もういいよ、すべてを諦めてもいいよ
それだけでよかった
君と一緒にいられるのなら
この苦しみを抱えて息をするよ
例えふたりになれなくても
それだけでよかった
君と一緒にいられるのなら
この痛みを抱えて息をするよ
忘れたい、忘れたくない思い出を
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