第二話

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第二話

第二話?    今更の事なのだが、エレナがお尋ね者になり賞金首として公開されている。  アースキャニオン全土にある各地で発行されるガイドブックにはエレナの似顔絵が記載されている。  「あたしは、こんな凶悪な顔じゃないわ!」 とは、毎回掲載されるエレナの似顔絵をみながら、本人のエレナは、「描くならもっと可愛らしく描きなさいよ」 等と喚きながら、ガイドブックを地面に叩きつけては踏みにじっている。  本来のエレナと違う理由。 それは、エレナの似顔絵を描いた者がよほどの下手くそか、その可愛らしい顔を敢えて凶悪犯っぽく描いたから…………。  あるいわその両方……………。  いくら似顔絵が公開されていても、本人と全然違うのであれば、素顔で街中を歩いても通報されないし捕まらないのでそれはそれでエレナにとっては好都合。  だが、凶悪犯風に描かれ下手な似顔絵といっても、エレナの特徴である大きなリボンに腰元まである長いポニーテールはしっかりと描かれてしまっているのは仕方がない。    なので、当然のことながらエレナは普段からフード付きの外套を羽織っているか、人通りに出てもこまめに着替えて通りすがりの旅人か一市民を演じているのだ。  もちろん、それ以外にも露出の多い服装を選び、頭や髪飾りであるリボンに気を取られないようにと、自分の見た目を安売りしている状態だ。  「これでまた、罪が重くなるのね……」  と自分の現状に肩を落としながら呟き、ゼルダ城とその城下町を守る天然の城壁、ガラサイド山脈を越え、スクルージディスコニアンに両手を振って立ち入る。  スクルージディスコニアンはアースキャニオン大陸有数の観光地で知られ、その広大な湖とその湖に佇む巨大な女神像が有名だ。    このスクルージディスコニアンは、街の面積の殆どが湖であり、湖に比べれば陸地などほんの僅か程度。  現在の領主である、スクルージディスコニアンがどういった意図でそうしたかわからないが、陸地にある建造物の屋根や外壁は湖の色に近い青色で統一しているのだが、スクルージディスコニアンが駐在している領主館だけは建物とその周辺だけが赤色なので、スクルージディスコニアンに初めて訪れた人でもすぐに、そこが領主館だというのがわかるし、ガイドブックに掲載されている案内を見れば一目瞭然だ。 贅の限りを尽くして赤いレンガが大量に使われ建造された巨大なゼルダ城は、ちょっと前まではスクルージディスコニアンに並ぶ観光地になりそうなくらい本当に綺麗なお城だった。  だった…………。  だったのである…………。  しかし、今では何者かの襲撃かあるいわ魔物、それとも内部での事故が勃発したのか? お城という装いを失い、所々大きな穴が空き修繕中であろう木板で塞がれて、見るに堪えない姿を晒していた。  その見るも無残なゼルダ城敷地内から少し離れたところには、昼も夜も常に見張りや衛兵が見回りしているゼルダ城と同色の一際堅牢な建造物がある。  ゼルダ城別棟の宝物庫と呼ばれ、またの名を危険物貯蔵庫とも呼ばれていた。   「あたしからしたら、この程度の見張りや衛兵の存在なんてザルなのよね」  エレナは数えるのも面倒なくらい侵入した宝物庫の中にいた。  まるまるワンフロア、窓は一切無く、出入口が一つと搬入用の大扉がひとつ。 庫内はいくつもの魔導灯の明かりが照らし、明るさは十分に確保されている。  見渡す限り怪しいものばかりが置かれていたり、こんなものが危険物なの? と疑ってしまうような人形や絵画などがおかれている。  もちろん、それ以外にも木箱に収められたどこの国のものかわからない金貨や紙幣、巻物に手紙等。  他にもかび臭い書物や地図等わけのわからないものがしまわれている。  それらの値打ちがどれほどなのかわからないし、市場に持って行っても値段がつけれない価値の無いものだったりする。  「まぁ今代の王様含めて歴代の王様が集めた収集品ってところかしらね」  そんなたわいもない独り言を呟いているときだった。 ーーーーードカーン!ーー 一際大きな爆発音が外から響く。   突然の爆発音に、エレナはビクッとなりながらも  「またかしら……」 と漏らす。  この爆発音は、ゼルダ城からによるものだ。    以前から度々この宝物庫に侵入している時もこうした爆発音が響き渡っている。  もちろんこの別棟の宝物庫にいるときだけでなく、城下町にいるときも、城内探索をしているときも牢獄にいるときも、もちろん城内にある普通の宝物庫で金目のものを盗んでいるときも普通に爆発音が聴こえて来る。  城下町の人々も、最初はこの爆発音には魔物や族の襲撃かと驚いていたそうだが、逆に今では日常茶飯事と化し、  「またか………」 「うるさいわねぇ!!」 「子供が起きちゃうじゃない!」   と、ほのぼのとした日常の一つとなっているのだが、その秘密は城内では箝口令が敷かれ、誰も口を割ろうとしない。  「あの爆弾娘の仕業ね……」  と、クスクス笑う。  唯一、外部の人間であるエレナはその真相を知っているかのようだ。  まぁ、件の爆弾娘についてはまた今度……。 と、エレナが思ったかどうかは定かではないが、エレナは爆発音を聴きながら宝物庫を探索する。  「でも、一冊の本だなんていったら、どこにあるのかしら?」   そんなことをいいながら、庫内の木箱を物色している。   「まぁ、危険物置場というのもわかるけど、はっきり言ってガラクタばかりなのよね」  と、漏らす。  確かにガラクタに近いものばかり…………。  だが、これらを収集した歴代の王様にとっては一国と引き換えにしてもいいと思ったものを集めていたのだろうが、もちろんそればかりではなく。   「まぁ、これだけあれば戦争も出来るだろうし、一般人が持ってたら危ないものもあるわよね」  そういいながら、金目のものではないが、見るからに伝説級の武器や防具もあり、その中から適当に自分が使えそうなものを見繕い、自分の胸の中、正確にはエレナの胸を優しく包んで守るための下着、ブラジャーの中に入れていく。 以前侵入した時には、さほど興味がなかったものでも改めて見てみれば欲が出てしまう。  ぶっちゃけ、この行為が歴代の王様と変わらないという事実にエレナは気付いていなかった。      
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