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プロローグ
これは大昔のこと。
先祖代々甘い物が苦手な一族がいた。
一族は薬剤師の家系で、この世界のありとあらゆる病気や怪我を治していた。
彼らの作る薬は、ものすごく苦くて不味いのだけれども……。
その効果は人々からの称賛を得ていた。
しかし、彼らの作った薬には弱点があった。
薬は水と一緒に飲むのが一番だということを知っているだろうか。水以外で飲むと、効果を弱めてしまったり、別の作用が及ぶ危険性もある。
それと似たようなもの。彼らの薬を口にしたあとすぐにお菓子を口にすると、とんでもない効果が現れた。
薬の効果が完全に消え去るだけならば良い方と言える。
病気や怪我が悪化したり、身体の健康な部分に影響を与えたりすることもあった。
薬を喉に通した後お菓子を口にし、どのような結果となるかは人それぞれだった。
自分たちの薬を害となる物に変化させてしまうお菓子という存在を、一族の人間達は嫌悪していた。
決して口に含むことはなく、見るのも嫌だと避けていた。
一族の人間の当主はある日こう言った。
お菓子なんて、この世から無くなってしまえばいいのに。
これは言ってはならない言葉だった。
この世界の神様はお菓子が大好きであったから。
自分の好きな物を否定し、無くなってしまえと言った一族の人間を神様は許せなかった。
神様はまだ、子供だった。
好みはそれぞれなんて受け止める心の広さを持ち合わせてはいなかった。
お菓子なんて無くなれ? 何事だ。
お菓子の良さが分からないなんて、どうかしている。
神様は一族に呪いをかけた。
お菓子を心から愛さなければ一生解けない呪い。
しかし一族の人間に変化はなく、何が呪いなのか分からないまま時は流れて行った。
子供の神様だから、呪いも失敗したのだろう。
失敗……したのだろうか?
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