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◇◇◇◇◇
「失礼します。父上、母上、どうなされましたか? 兄上まで……」
片膝をついて頭を下げたイリスが顔を上げると、玉座に就く両親とその少し離れた位置に険しい目つきで睨みつけてくる兄、イラス・ウィトネースがいる。
急な呼び出しに何かあったのだろうと推測出来たが、父の眉間に皺を寄せた深刻そうな顔を見て確信へと変わった。
他国との仲に亀裂が走ったのだろうか。今のところは友好的な関係を築けていると思っていたが、人間同士が小さなことで簡単に争いを起こすのだから国同士が些細なことで友情を壊してしまっても何ら不思議ではない。
嫌な予感を想像しつつ、イリスは覚悟を決めて父親に耳を傾けた。
「実はな……」
大きくため息を吐いて、国王はイリスに告げる。
それはイリスが思ってもみない内容だった。
「クリフィール王女がお前との婚約を解消したいと申し出たそうだ」
「……は?」
一瞬何を言われたのか理解出来なかったイリスだが、落ち着いて冷静に頭の中を整理する。
クリフィール王女はイリスの婚約者だ。
隣国、リブラン王国との交友のために幼い頃父親同士で決められた。互いに愛があったかと聞かれれば無いと答えるのが正しいが、亀裂があった訳ではない。良くもなければ悪くもない。国のための婚約と割り切った関係を築けていたと言える。
クリフィール王女が何故自分との婚約を解消したいと申し出たのか、その理由を尋ねようとする前に兄、イラスが教えてくれた。
イラスは責めるように、イリスを怒鳴りつけた。
「B型だから! お前の魔力型がB型だから……っ。クリフィール王女は婚約を解消したがっているんだ。いや、解消したも同然だ! 向こうは何が何でもそのつもりでいる。戦になるとしても気持ちは変わらないだろう。向こうはこの国一つ滅ぼすくらい簡単な軍事力と繋がりを持っているんだからな! お前がB型のせいでウィトネース王国はリブラン王国の後ろ盾を得られなくなった!」
控えている兵士を含め、この場にいる全員から非難が寄せられているようにイリスは感じた。
この世界の魔力は四つに分類され、それを魔力型という。
常に適量の魔力のA型、魔力量に統一があったりなかったり、時には乱暴な魔力のB型、穏やかな魔力のO型、A型のようなB型のような不思議な魔力のAB型。
イリスは魔力型がB型だという理由で婚約を解消されようとしているのだ。今まで婚約者の魔力型を知らなかったことにも驚いたが、イリスもクリフィール王女の魔力型は教えてもらっていなかったため、その驚きは直ぐに消え去った。それはそうと、非常に納得しがたい理由だ。
「確かに私の魔力はB型です。ですが、それがどうしていけないのです? B型の何がいけないと?」
「おまっ――」
今にも殴り掛かりそうなイラスを制したのは国王である父。
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