発火したラブレター

4/13
前へ
/13ページ
次へ
 ラブレターを、渡す。その言葉は今の僕にとっては禁句も同然で、あの時の光景がフラッシュバックして、それで━━━━━━━━ 「落ち着いて、穂高」  気が付くと、耳元で美奈に囁かれていた。 「……危ない所だったね。今の君の顔色を見る限り、燃える1歩手前って所かな」 「……」  僕はその言葉に何も言えず、項垂れるしか出来なかった。美奈は溜息をついて、また僕の耳元で囁く。 「今日の夜9時、あの川で待ってる。来たくなければ来なくてもいい。あの場所は君にとって、トラウマみたいなものだからね」 「……美奈に何が分かるんだよ」  思わず強い口調を使ってしまった。でも美奈は寂しそうに微笑むと、顔を背けた。 「分かるよ。私にとっても、トラウマな場所だからね」
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加