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全身が水浸しになって、服も所々爛れていた。美奈は着替え用の服を持参していて、手際の良さに驚くと同時に、美奈がこんな事言わなければ着替える必要も無かったのになと思った。怒りは当然あったけど、もう1回川に飛び込むのは御免だから、我慢した。
「要するに穂高は喜怒哀楽例外なく体が燃えるようになったんだね」
「……それ、わざわざ試す必要あったか?」
「体験主義だから、私。本当かどうか試さないと気が済まない性質なんだ」
美奈は少しも悪びれない。何処でそんな強靭なメンタルを手に入れたのか、逆に興味があるくらいだった。
「で、この病について、解決方法があるんだよな?だから俺今日ここに来たんだよ」
「え?無いよそんなの」
僕の足が一瞬燃え上がる。
「楽しい提案って何だったんだよ!」
「……穂高はラブレター、渡したい?」
僕の剣幕を受け流して美奈はそう呟いた。疑問を疑問で返される形で紡がれたその言葉は、僕にとっては毒すぎた。
「……ラブレター渡す相手も居なくなったし、別にって感じだけど」
「でも穂高は、愛梨の事がまだ好きなんでしょ?なら奪うくらいの気持ちで行かないと、後悔するよ」
確かに僕は、まだ愛梨の事を忘れられていない。忘れられないだけだ、と誤魔化す事は簡単だ。簡単だけど、苦しい。
「……分かりやすいね」
僕の頭は燃え出した。この病から「逃げるな」と言われている様な気がして、僕は決心を固める。
「……ラブレター、渡したいです」
「……じゃあ、頑張ろう!」
何処か寂しげな声が聞こえて、僕と美奈の夜の夏特訓が、始まった。
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