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のんちゃん
小さな部屋の中心で、小さな机に並んだ若い女性と少女が一冊の本を見つめていた。
「分母を揃えて、それぞれ掛けて、えーと、12/16だから、3/4!」
「はい。乃々花様、正解です」
「やったぁ!」
乃々花と呼ばれた少女は大きく両手を上げた。そこへ初老の女性が顔を覗かせた。
「のんちゃん、ハナさん、何しているの?」
「絵本!」
「あら、良いわねぇ。でも、そろそろお爺ちゃんがテレビに出る時間ですよ」
「お爺ちゃん!? 見るぅー!」
乃々花は勢い良く部屋を飛び出し、壁に手を付きつつ階段を一段ずつ両足揃えて降りて行った。
「ハナさん、のんちゃんはどんな絵本が好きなんですか?」
「はい、乃々花様は最近このような算数の本を好んで読んでいらっしゃいます」
「算数!? まだ4歳なのに!?」
「はい恭子様。近年では学力格差も大きくなっておりますので……」
「近頃の子は色々大変ねぇ……」
二人も後を追うように一階へ降りた。
「のんちゃん凄いわね〜、あんなに難しい本も読めちゃうなんて」
「うん! のんちゃんは早くパパとママのお手伝いができるようになりたいのです!」
「偉いわねぇ。でものんちゃん、あれは絵本じゃなくて教科書って言うんじゃないの?」
「でも、みかんが半分とか絵があるです?」
「みかんの絵だけで絵本?」
「ママが言ってたの」
「あらぁ、それは騙されているわね」
「ママは嘘吐かないです」
「あらあら? 本当に?」
「死んでも、嘘吐かない、です」
「ふふっ、お堅いこと」
「? みかんもママも固くないです?」
「うふふふ。そうね、それなら良いの」
そうしている間にテレビに初老の男性が映し出された。
「お爺ちゃんだ!」
テーブルに両手を付いてガタガタ揺らしながら乃々花は何度も飛び跳ねた。
「ほらほら静かに、お爺ちゃんが喋りますよ」
「うん!」
「お爺ちゃん凄いわねぇ。まさに世紀の大発明よ、フューマン」
「うん! ちょっと何言ってるか解らないけど凄い!」
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