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先ずはぬいぐるみの綿を抜かなくては…。
机の引き出しから鋏を取り出して、ぬいぐるみのお腹の縫い目に差し込む。
プツリ、プツリと糸が切れていく。
半分くらいに差し掛かった頃、お腹いっぱいに詰まった綿が切れ目から溢れ出してきた。
そろそろいいかな…。
溢れ出してきた綿を指で摘んで引っ張る。
思った以上にしっかりと詰まっているようで、途中でブツリと切れてしまう。
切れ目に指を差し込んで綿を掻き出す。
ふわふわとした綿の感覚が心地好い。
全部出さなくてはと奥まで指を差し入れた時、ヌルり…とした感触に思わず手を引っ込めた。
今のは…何?
生温かな…まるで臓物を触ってしまったかのような感覚だった。
引き抜いた指をまじまじと見る。
何もついていない。
抜かれた綿は新雪のようにふんわりと机の上に積もっている。
…気の所為よね。
気を取り直して、綿を全部抜いていく。
20cm程の熊のぬいぐるみはぺしゃんこになって横たわった。
「ごめんね…。」
無惨な姿に思わず謝る。
次はお米を詰めなくては。
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