塔矢の夏

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古いタイプの呼び鈴を何度か押すと、奥から足音が聞こえる。 あの口うるさい婆さんは元気だろうか。 「……はい。」 がらりと引き戸を開けたのは涼香くんだった。 俺の姿を見て、目を丸くしている。 そういえば、夏休みはフィールドワークがてら実家に帰ると言っていたな。 「あー、えーと、お祖母さんに話を聞きたいんだが…。」 「久しぶり、ですね。」 そう言って、涼香くんは玄関にスリッパを並べた。 「おや、懐かしい顔が来たもんだねぇ。」 奥の襖から婆さんがぬっと顔を覗かせた。 十年前に比べると顔の皺が深くなったような気がする。 「失礼なことを考えてるんじゃないよ、若造が。」 しまった。 婆さんも涼香くんと同じような能力があったんだったな。 「テントを張るなら裏が空いてるよ。」 婆さんはそう言って、また奥に引っ込んだ。 「お世話になります。」 そう声をかけて、玄関から外に行こうとすると、涼香くんが靴を履いて着いて来た。 「手伝い、ます。」 車に乗り込んで、家の裏に回る。 変わってないな。 そこは俺の記憶にある風景そのままだった。
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