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テントに戻った頃にはすっかりと日が落ちて、少し肌寒いくらいになっていた。
そういえば、涼香くんが初めてここに来た時もこんな夜だったな。
ごろりと横になり、テントの頂点を見つめる。
きっとこの向こうには星が夜空を埋めつくしているんだろう。
「流石に今日は来ないか…。」
先程の涼香くんの様子では今日はここへは来ないだろう。
今日は寝るとするか。
明日は早起きして、少し遠くまで足を伸ばしてみることにしよう。
寝袋を引っ張り出して床に広げてまた横になった。
すると、とんとんとテントを叩く音がした。
起き上がって顔を出すと涼香くんが外に立っていた。
「珈琲でも飲むか?」
俺がそう言うと涼香くんは頷いて、早足で勝手口に歩いて行った。
戻ってきた涼香くんの手には湯呑みが握られている。
「珈琲カップくらいあるだろうに。」
小さな椅子を二つ並べながら、俺が言うと
「これが、いいんです。」
そう言って、涼香くんは少し笑った。
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