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頷きあったが、直ぐにンーーーーーーー介太郎子
「いや、違うだろ」
と言った。
「いや…、世間一般はそうだけど俺たちは違うだろ。名前は自分たちで付けた…」
ンーーーーーーー介太郎子が呟く。一度は頷き合った三人だったが、この一言で興ざめしたように、三人とも視線を逸らした。
三人の間に気まずい空気が流れる。
「まあ、確かにそうだけどさ。でも、俺たちだって適当に知ってる文字を書いた紙を箱に入れてそこから選んだ名前なんだから同じようなもんだろ」
ペ292が気を取り直すように言った。
「でも、確かに俺たち前にも名前あった」
ポガロが言った。
「おい。あんなのは名前じゃねえよ。あれは犯人たちが俺たちを勝手にそう呼んだだけだ」
ペ292が怒鳴った。
「松吉に竹吉に梅吉か。今思い出しても、ダサい名前だったな」
ンーーーーーーー介太郎子が自嘲するように言う。しかし、その後真顔に戻り
「ん?松吉、竹吉、梅吉?なんかちょっと似てるな」
と言った。
「そう、それに俺たちはあの頃も、それから今も同じ家に住んでいる」
ポガロが低い声を出す。
「お前は俺たちが兄弟の条件に当てはまっているって言いたいんだな。だが、最大の条件は俺たちが同じ試験管から生まれたかどうかだ」
ンーーーーーーー介太郎子が低い声で返した。
「残念ながら俺たちは同じ試験管で生まれてはいない」
ポガロははっきりと言った。
「俺たちは試験管で生まれてはいない」
ポガロは同じようで決定的に違う事を繰り返した。
「おい。いい加減にしろ。何を言い出すかと思えば」
即座に声を上げたのは、ペ292だった。
「俺たちが兄弟かどうか。そんな事はどうでもいい。だけど、俺たちが試験管から生まれていない?そんな事あり得ないだろ。だって、あの犯人たちは俺たちを養育施設から誘拐したんだ。じゃあ、何で俺たちは養育施設にいた?それは俺たちが試験管から生まれたからだ。忘れたのかよ」
「ペ292は覚えているのか?」
ポガロが言い放った。
「ペ292には試験管から生まれ、養育施設にいた時の記憶があるのか?」
ペ292は言葉に詰まった。生まれた瞬間や赤ん坊の時の記憶がある人間はいない。それはただ、公安委員が犯人たちを射殺した後、三人に説明した事だった。
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