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「でも、それだけじゃ俺たちが試験管から生まれていないと言うには不十分だ」
ンーーーーーーー介太郎子が口を開いた。
「記憶がないだけで、俺たちは試験管から生まれたのかもしれない」
「だって、俺たちには翼がないじゃないか」
ポガロが呟いた。
「俺たちには翼がない。予知能力がない。レーザー光線が出せない。テレパシーが使えない。IQ300がない。普通の人間が試験管の中で遺伝子操作されて標準装備で持っているはず物を俺たちは何も持っていない」
ポガロの言葉にペ292もンーーーーーーー介太郎子も何も言い返せなかった。
彼らは気付いていた。自分たちが他の人間と違う事を。でも、目を伏せて来たのだ。何故なら、彼らと他の人間の差異を比べてみても、彼らが劣っている所こそあれ、彼らが勝っている所は何もなかったから。
「じゃあ、俺たちはどこから生まれたっていうんだよ」
ペ292が無気力な声で言った。
「これは前から考えていた仮説なんだけど…」
ポガロが自信なさげに切り出した。
「子供は試験管からも生まれて来るけど、大人からも生まれて来るんじゃないかな?」
「大人から?」
「俺たちを作った人間はどうして俺たちに遺伝子操作をしなかったんだろうって考えたんだ。生まれる前の俺たちがどこにいたにせよ、そこに介入して遺伝子を操作する事は難しくない。でも、一か所だけ、そこにいられると遺伝子操作できないって場所がある」
ポガロは一瞬、言葉を区切って、それから続けた。
「自分自身の身体の中だ」
「なるほど、自分自身の身体を引き裂いて遺伝子操作をするわけにはいかないってことか…。理にかなっているようにも思えるけど…」
ンーーーーーーー介太郎子が難しい顔をしながら呟く。
「だがよ…」
ペ292が口を挟んできた。
「この世界、大人は沢山いるけど子供が生まれたなんて話は聞いたことがないな」
「きっと、子供が生まれるための特殊な方法があるんじゃないかな?俺たちを作った人間はその方法を何らかの理由で知っていて実行したんだ」
ポガロが答える。
「じゃあ、それは一体誰なんだ。俺たちを作った人間ってのは…」
「そんなのあいつらしか考えられないじゃないか」
そう言ったのはンーーーーーーー介太郎子だった。
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