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「おい、見ろ。こいつの足の間から小さな猫の頭が出てきているぞ」
ポガロの言う通り、猫の股からとてつもなく小さい頭が顔を覗かせていた。
「こいつ、腹が減って子猫を食ったのか!」
ペ292が言う。しかし、ンーーーーーーー介太郎子は「いや、」と否定した。
「これもしかして子供の猫が大人の猫から生まれようとしているんじゃないか…」
「じゃあ、やっぱり大人から子供が生まれるって仮説はあっているってことか!」
猫は鳴き続けていたが、突然立ち上がると走ってどこかへと消えてしまった。
「やっぱり、大人から子供が生まれるんだ」
走り去る猫の背を見てポガロが言った。
「これが証明だよ」
ペ292はそれ以上何も言わなかった。
「やっぱり、その事実を知ってしまう事って違法なのかな」
暫くして、ポガロが言った。
「多分、そうなんじゃないか。だから、犯人たちは公安委員に殺された。ンーーーーーーー介太郎子が言ったように全て辻褄が合う」
ペ292が答えた。もう反論をしようとはしなかった。
「それに辻褄が合うのはそれだけじゃない。さっき、窓の外に銃を持った公安委員が見えた。きっと奴らはこの家を取り囲んでる」
暗い沈黙が三人の間に流れた。
パン!
家の外で銃声が聞こえた。
続いて、ニャアーーーという猫の声も聞こえた。そして、それ以上猫の声は聞こえなくなった。
「俺があの猫を連れて来たから、こうなった…」
ンーーーーーーー介太郎子が言う。
「何も見てないって事にしよう。俺たちは何も見てないし、何も気づいていない。それなら…」
ポガロが叫んだ。しかし、その言葉をペ292が遮る。
「ダメだ。奴らはテレパシーが使える。俺たちの考えている事なんてお見通しだ」
家のドアが勢いよく開かれ、何人もの公安委員が室内に入って来た。
「何となく、いつかはこうなる気がしていたんだ」
ペ292が小さな声で言った。
「俺たちはこの世の中に混入した異分子で、いつかはそこから弾かれる」
公安委員たちは掛け声もなく、しかし一糸乱れぬ動きで一斉に銃を構えた。皆、声をかけずともテレパシーでコミュニケーションが取れる。
銃を持った公安委員の後ろでは、銃を持たない公安委員たちが手を構える。銃で殺せなかった時には、レーザー光線を発射するつもりらしい。
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