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その日の晩、結と八緒は圭佑の家を訪ねて共に夕食を摂った。二年ぶりに圭佑が帰ってきたこともあって、みんな大変な盛り上がりだった。特に圭佑の両親は嬉しそうで、普段は大人しい父親すら大きな声で笑い、母親は何くれとなく圭佑の世話を焼きたがった。さらにはこの家で同居している圭佑の兄夫婦のふたりの子供も、最初の内は見覚えのない叔父を牽制するように離れて見ていたのが、しばらくすると好奇心に負けたのかおずおずと近寄ってくる。圭佑もまた、久しぶりに会う甥姪がそばに来るのが可愛くて仕方ないらしく、頭をぐりぐりと撫でたり菓子を口に運んでやったり、事細かにかまっていた。
いつもは八緒とふたりで静かに生活をしている結が、そんな賑やかな空気に酔ってしまうのは当然といえば当然だった。
お腹もふくれ、楽しい雰囲気にたくさん笑い、頬がぽっぽっと熱く感じてくる。火照った顔を少し冷まそうと、結はひとりそっと外へ出た。
家の中の暖かさが嘘のように、壁一枚隔てただけなのに外の風はひんやりとして、それが今は心地よい。きらきらと瞬く星の下、同じリズムで流れる静かな波の音が綺麗で、結はいつもと同じ夜の景色がいつもより輝いて見えるような気がしていた。
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