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「圭佑くん、いつまでこっちにいられるの?」
八緒の質問に結は待ってましたとばかりにくふくふと笑って答える。
「あのね、それがね。圭ちゃん、もうずっとここにいるんだって。おじさんが漁に出るのが辛くなってきたから、代わりに行くのに戻ってきたって」
「それは嬉しいわね、結」
満面の笑みを浮かべ、今度こそ頬を赤く火照らせて『うんっ』と答える結に、八緒も嬉しそうに笑っている。
「結は圭佑くんのこと、好き?」
少し間を置いて言った八緒の表情は、それまでのにこやかなものと違って、笑っているのに真剣な雰囲気を感じさせるものだった。そんな八緒に結は少し戸惑いつつも返事を返す。
「え……、うん。わたし、圭ちゃんのこと、好きだよ。だって聡一兄ちゃんより優しいし、一緒に遊んでくれるし……」
急にどうしてそんなことを聞くんだろうと居心地悪く思いながら、歯切れ悪くもぞもぞと答える。そんな結に、八緒は軽くため息をついたが、その顔は穏やかに微笑んでいた。
「そうじゃないの、結。あなたは圭佑くんのこと、男の人として好き?」
「男の、人……」
そう言われても結には分からなかった。好きかと聞かれたからそう答えたのに、違うと言われても何が違うのか分からない。自分が今、圭佑を好きだと思う気持ちと、八緒の言う男の人として好きという気持ちは、一体どう違うのだろう。
分からない。自分の気持ちも、八緒の意図も。
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