弟ダイアリー

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 夏休み帳は終わった。自由研究も工作も終わった。あとは絵日記を書くだけだ。 「こんにちはー」  来た! 私は一目散に玄関へと走った。 「こんにちはー!」  毎年夏休みになると叔母ちゃんが従兄弟を連れて泊まりにくる。私より3つ上の美紗(みさ)ちゃん、それからまだ幼稚園の和哉(かずや)くん。ひとりっ子の私には夏だけお姉さんと弟ができる。賑やかで楽しい1週間だ。 「母さんただいま。お義姉さん、よろしくお願いします」  叔母ちゃんがお祖母ちゃんとお母さんに真面目な顔で頭を下げた。いつもなら「よろしく!」と手を上げて元気に挨拶するのに、変なの。 「聖子(せいこ)ちゃんもよろしくね。1年見ないうちに大きくなったね。何年生?」 「3年生だよ」  叔母ちゃんは私に微笑んだ。叔母ちゃんは1年見ないうちに細くなった。前は丸い顔をしていたのに、今はガイコツみたいになっちゃってる。 「和哉くん久しぶりだね」 「……」  和哉くんはいつも最初は大人しい。でも慣れてくると家中飛び回ってお祖母ちゃんに怒られる。去年なんかかくれんぼで仏壇に隠れた。位牌やお線香の灰をひっくり返してもの凄く怒られてたっけ。1年経って少しは大人になったかな? 「あれ、美紗ちゃんは? まだ車?」  美紗ちゃんは色んな事を教えてくれる。芸能人の事とかオシャレの事とか。 「来ない」 「え? 今年は来ないの?」 「……」  美紗ちゃんに会えると思って楽しみにしてたのに。がっかりだ。今年の夏休みは和哉くんのおもりで終わるのだろうか。つまんない。
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