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「帰ろうか」
「うん」
私は和哉くんをおんぶした。重たい。でも歩けなくなった和哉くんを連れて行くにはおんぶするしかない。
「ごめんね。今度お父さんに頼んで車で連れてってあげるね」
「どこへ?」
「和哉くんのうち」
「僕のうちは聖子ちゃんちだよ」
和哉くんは私の背中に顔を埋めた。
「お腹空いた」
「だよね。走ったもんね」
私は和哉くんをおんぶしたまま近所の中華屋さんに入った。電車に乗らなかったのでお金はある。
ラーメンをひとつ頼んだ。和哉くんはまだ一人前食べられないだろう。取り分け用のお椀にラーメンを半分入れた。和哉くんはすぐに食べ終わった。丼からラーメンをお椀に移した。和哉くんは食べた。またラーメンを移した。結局和哉くんひとりで一人前食べてしまった。
「あら、お姉ちゃんの分なくなっちゃったわね」
中華屋さんのおばさんが笑いながらもう一杯ラーメンを持ってきてくれた。
「優しいお姉ちゃんだから、これご褒美だよ」
私もお腹が空いていたので一気に食べた。とても美味しかった。
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