弟ダイアリー

7/17
前へ
/17ページ
次へ
「それ貸して」 「ヤダ」 「絵日記には和哉くんも描いてあげるから」 「ヤダ」 「和哉くん下手なんだから24色もいらないじゃん」 「これ僕のだもん!」  ひとりっ子がわがままなんて嘘だ。和哉くんの方がよっぽどわがままだ。 「ここは私の家なんだからこの家にある物はみんな私の物なの!」  私は和哉くんから色鉛筆を取り上げた。和哉くんは涙ぐんで私を睨んだ。  でも泣かなかった。結構強くてびっくりした。きっと美紗ちゃんと兄弟げんかして慣れているのだろう。私もこれから兄弟げんかができる。これが記念すべき第1回目だ。私は嬉しくて絵日記に和哉くんの睨んだ顔を描いた。我ながら上手く描けた。  夜お母さんに和哉くんに色鉛筆を返すようにいわれた。でも一緒の家に住んでいるのに返すもなにもない。一緒に使えばいいじゃんと私は反論した。 「あれはね、和哉くんの誕生日にお父さんからもらった物なんだって。だから和哉くんの宝物なの。返してあげなさい」
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加