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「それ貸して」
「ヤダ」
「絵日記には和哉くんも描いてあげるから」
「ヤダ」
「和哉くん下手なんだから24色もいらないじゃん」
「これ僕のだもん!」
ひとりっ子がわがままなんて嘘だ。和哉くんの方がよっぽどわがままだ。
「ここは私の家なんだからこの家にある物はみんな私の物なの!」
私は和哉くんから色鉛筆を取り上げた。和哉くんは涙ぐんで私を睨んだ。
でも泣かなかった。結構強くてびっくりした。きっと美紗ちゃんと兄弟げんかして慣れているのだろう。私もこれから兄弟げんかができる。これが記念すべき第1回目だ。私は嬉しくて絵日記に和哉くんの睨んだ顔を描いた。我ながら上手く描けた。
夜お母さんに和哉くんに色鉛筆を返すようにいわれた。でも一緒の家に住んでいるのに返すもなにもない。一緒に使えばいいじゃんと私は反論した。
「あれはね、和哉くんの誕生日にお父さんからもらった物なんだって。だから和哉くんの宝物なの。返してあげなさい」
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