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「おかわり」
無言で見つめ続けられることにたえられなくなり、優は空になった茶碗をそっけなく暁生に手渡した。
「はいはい~」
立ち上がって台所に向かう、後ろ姿の暁生を時間差でこっそり見つめ返す。
なんでこんな色男に育ってしまったんや。
優は頬杖をついてため息を吐いた。
昔みたいに自分の後ろに隠して、暁生のことを独占してしまいたい、とか思ってしまう。
というか、そもそも。
「俺、なんでこんなやつのこと好きなんやろ」
「なんて~?」
こっそり呟いた独り言を聞きつけて、おかわりを持った暁生が笑顔で飛んでくる。
「なんもあらへんわ、ボケ!」
なにより優が情けないのは、自分がその大安売りの微笑みに、どこの誰よりもドキドキしてしまっているということだった。
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