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「で、相手はどんな人やったん?」
無人になったところで暁生が尋ねてくる。
「んー、真面目そうな、隙のない感じ? なんか、付き添いの俺に気ぃつこて、いっぱい話しかけてくれた」
「ふーん」
笑顔で相づちを打ち、なんの話をしたのかとさらに尋ねてくる暁生に、優は深く考えもせず誕生日や好きな食べ物や趣味など、菱川に聞かれたことを思いだしながらしゃべった。
「ふーん」
「なんやねん、ふーんふーん、っておんなじ反応ばっかり。気味悪いな」
詳しく聞きたがるくせに、笑顔を崩さぬままものも言わない暁生に毒を吐いたら、さらに口角を上げて笑みを深める。
しかし作り物とわかっていても、暁生の笑顔は菱川と比べ物にならないほど魅力的だ。
そんなくだらないことを考えながら胸をときめかせていると、笑顔を崩さぬままの暁生が、す、と一歩、距離を詰めてくる。
「な、なんやねん」
「今日のおまえは、一段とかわいらしいなぁ」
「はあ? 急になに言いだすんじゃボケ」
口元は笑っているけれど、暁生の目は真剣に自分を見つめている。
「かわいいおでこ丸出しにしてからに。おめかしした格好、ほかの人には見せて、ぼくには見せへんつもりやったん?」
ヒタリと、額に暁生の手のひらが触れる。
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