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「また、あかんかったんかいな」  昼休みの瀬戸一で、隣のテーブルに座る老婦人が、ぞぞ、と食後のお茶をすすってため息を吐いた。  三日前の早紀の見合いは、すでに破談に終わっていた。  優がホテルの喫茶室を辞してからいったいどんな展開があったのかわからないが、今回の話は白紙に、と昨晩、仲介人である菱川の上司から電話で連絡が入った。 「もうすぐ三十路やのに、ええかっこして振袖なんか着て行くから」 「結婚する相手探しに行くのに、猫かぶっても無駄や。あとで結局、化けの皮はがれるんはわかってんのにアホらしい」  瀬戸一の常連客たちの容赦ないツッコミに、早紀はテーブルにだん、と両手をつき立ち上がって、声を荒げ反論する。 「今回はウチもこれでよかってん。相手の男、ぜんっぜん、タイプやなかったから」  優のふくらはぎを蹴ってまで二人きりになりたかった男のことを、タイプでないと表現するには無理がある気がした。  うどんをすすりながらこっそり早紀の様子をうかがうと、頭上から思いきりにらみ返された。  店内にいる全員が早紀の発言を負け惜しみと捉えたらしく、さっきの説教モードから一転なぐさめモードにガラリと雰囲気が変わる。
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