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「偽装見合い?」  優は仕事を切り上げ、話があるという菱川と連れ立って近所のファミリーレストランに入った。  そしてそのとんでもない話をすべて語り終えた菱川を前にして眉を寄せる。 「姉ちゃんに恋人がおるって言うんですか?」 「ええ、本人がそうおっしゃってましたから」 「まさか」  さっきも小雨の降る中、張りきって合コンに出かけて行った姉の姿を思いだし、優は目をすがめて首をひねった。 「それはなんかの間違いやと思いますけど」 「早紀さんは恋人がいることを、ご家族に隠しているのです」 「なんでそんなこと」 「バレてはまずい相手だからではないでしょうか」  一口飲んだコーヒーのカップをソーサーに戻して、菱川はふっとため息をこぼした。  見合いの三日後に菱川の上司から電話があり、今回の話は白紙にしてもらいたい、との通達を受けたと母から聞いていた。  でも菱川本人の話によると、それは実は表向きの形式であって、見合い当日にすでに自分は振られていたと言うのだが――
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