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「そんなアホな!」  どう考えてもおかしい。  先日の気合が入った振袖姿の早紀が頭に浮かんできて、優は噴きだした。  始めから断るつもりの見合いに、そこまで気合いを入れて行く意味がわからない。  面白おかしくそう説明したのに、菱川からはにべもない返答が返ってくる。 「その行動も、恋人の存在を完璧に隠しとおすためには必要なのでしょう」  ケラケラと笑っていた優は、鉄仮面のような無表情で見つめてくる菱川の視線に刺されて、ゆっくりと笑いを引っこめた。  早紀に恋人がいる。  そんな話は聞いたことがなかった。  もし菱川の話が本当なのだとしたら、偽装の見合いと合コンに明け暮れ、家族にも隠しとおさなければならない早紀の恋人とは、いったいどんな人間なのだろうか。
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