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寝不足の目をこすりながら、暁生と遭遇することをうっすら期待しつつ昼休みの町をぶらついていると、『喫茶黒バラ』の前に地元民の小さな人だかりができているのを見つけた。
みんな店に入ろうとはせず、中の様子を隠れてうかがっている。
黒バラは店内が薄暗くBGMが大きいことが特徴の、町内では密談に使われることで有名な喫茶店である。
「なにしてはんの」
覗き見しているかたまりに声をかけると、全員がびくっと肩を揺らして振り返り、優だとわかると好奇心丸出しの顔で手招きしてきた。
「世にもめずらしい、デート現場や」
背中を押されて、優はガラス窓から薄暗い店内を覗きこんだ。
いちばん奥の目立たないテーブル席に、男女が座っているのが見える。
「あき、お……?」
目をこらして見てみると、その二人は暁生と早紀だとわかった。
小さなテーブルに乗りだして、真剣な表情で顔を寄せ合っている。
「なに話してんねやろう」
優の心を代弁するように誰かが呟く。
若い男女が二人で一緒にいるくらいでは町のみんなは騒いだりしない。
だけどわざわざ仕事の合間に密談用の喫茶店で落ち合っているので、暁生と早紀はこんなに注目されているのだ。
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