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「優、おまえの彼氏が姉ちゃんにとられるぞ」
どこぞのお調子者の発言で、野次馬のかたまりに小さな笑いが起こる。
「まさか姉ちゃんのほうが本命やったとはな」
この前、冗談で終わったばかりの結婚話がまた新たな進展を見せていた。
「どうしてん、優」
前に立っていた男が振り返って、優の顔を見るなり眉を寄せた。
「なにが」
「顔、むちゃくちゃ青いぞ」
そう指摘されて、優はたしかにクラクラすると思った。
「貧血や!」
誰かがそう診断を下すのと同時に、優はふらりと人だかりの中央に倒れこんだ。
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