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「オカベフーズの、菱川文也さんですよね?」  優の真横で立ち止まった暁生は、笑いに包まれる店内で、菱川に向かって淡々と尋ねた。 「き、君はあのときの――」 「オカベフーズ大阪支店営業部販売促進課に所属三十一歳長野県出身おとめ座AB型三人兄弟の末っ子、の菱川文也さんですよね?」  菱川の言葉を遮って割りこんだ暁生が息もつかず空でぺらぺらと語り首を傾げた瞬間、ぴたりと店内の笑い声が止んだ。 「そ、そ、そうだ、そうだけど。君がどうしてそんなこと知ってるんだ!」  額に浮いた汗を拭うこともせず、菱川は叫びながら真正面から暁生を指さした。 「あ。それと、もうひとつ」  自分に向いている菱川の指を払った右手の人差し指を立てて、暁生はにっこり笑った。 「毎週土曜に、美少年専門デートクラブで黒髪色白な二十歳のユウヤくんをご指名されてはる、菱川文也さんですよね?」  暁生のこの発言で、静まり返っていたうどん屋内がざわつきだす。
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