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「もうしない、しないから。優くんには今後いっさい近づかないから、か、勘弁してくれ」
「それで、ええんです」
よくできました、とばかりにうなずく暁生は嬉しそうだ。
優はそんな二人のやりとりを隣から見ていて寒気をもよおした。
暁生は菱川の個人情報入手のために、いったいどんな手を使ったのか。
早紀は暁生がデジカメを手に入れてくれたと言った。
その中身の映像に気をとられて忘れていたが、いったい暁生はどうやって菱川の私物を入手したのか。
昨日だって映画館付近で偶然会ったことに驚いてその不自然さに気づかなかったが、暁生は優と菱川が映画を観たことも、どの映画を観たのかも知っていた。
暁生は菱川の行動をくまなくチェックしていたのかもしれない。
暁生が優に隠していたことは早紀との交際などでなく、菱川のすべてを暴きだす計画だったのではないか。
菱川は危険だと教えたところで、人を信じやすく正義感が強い優には聞き入れてもらえない思ったのだろう。
なんせ、毎日暁生から送られる愛のメッセージをことごとく信じず、冗談だと切り捨ててきたのだから。
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