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転職したのが、そもそもの間違いだった。外資系企業の営業部で働いていた頃もある。去年の暮れから居辛くなった職場を辞めた。
「引き継ぎも済ませた。どうってことない」
直属の部下が社長令嬢と電撃婚したのだ。その後輩の青年が二年間ほど恋人だったが、突然、持ちかけられたのは残酷なフレーズ。子供ができたから別れて欲しいと言われた。仕事に集中していたら浮気されたのである。
それだけの話。過去のことは水に流そう。何があったか家族には詳しく話していない。
「これで、一段落ついたってところなの?」
紫とは幼馴染み。幼稚園から同じ腐れ縁。兄の雪芳とも母校が同じで恋愛結婚だった。
「心配かけて御免ね、紫。もう大丈夫だよ」
何か元気の出る、お摘みでも作ると慰め、屈託のない笑顔の女友達には救われている。
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