失恋 〜 瑠璃苣と蛸と白ワイン

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 一杯(いっぱい)どうだと誘われて(ことわ)(づら)くて(うなず)いた。白ワインもあるし、兄嫁は酒の(さかな)を準備中。 「兄さん、(たこ)(すみ)には(どく)があるらしいんだ。烏賊墨(いかすみ)は真っ黒なパスタになるくらいだし、美味しいらしいけれど、ほんとかな……?」  雪芳(ゆきよし)兄さんに、何気なく話しかけながら、霧葉(きりは)は食卓に並ぶ蛸唐草(たこからくさ)(うつわ)(はし)を伸ばす。(ゆかり)は料理上手だ。(たこ)若布(わかめ)酢味噌和(すみそあ)えに、瑞々(みずみず)しい瑠璃苣(ボリジ)のポテトサラダも美味しい。 「何が? まさか毒を(もっ)て毒を制すって?」  話半分にして衝撃から目を白黒させる兄。浮気した男に復讐(ふくしゅう)するつもりか問い詰めた。 「毒を()るつもりなのね。私も協力する!」  (たこ)(はし)(つま)んで食べようとしていたので、(うるわ)しの新妻に左手を両手で(にぎ)られ、(あせ)った。 「そんな訳ないでしょ。冗談でもやめてね。烏賊墨って美味しいのかな⋯⋯。ねぇ、(ゆかり)
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