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失恋 〜 瑠璃苣と蛸と白ワイン
どんよりとした鈍色の曇り空が広がって、霧雨が降り出すと、つい溜息混じりになる。濡れた足音は地下街では反響して聴こえた。擦れ違う雑踏、猫背の肩越しに浮かぶ月虹。淡い銀の光はエンゲージリングにも見えた。
(質屋で売ったら幾らくらいになるかしら)
行くあてもなく、裏路地を彷徨っている。涅色の靄が立ち籠め、来た道も思い出せず、日焼けした指輪の痕をなぞる指先は震えた。薄明かりの窓辺、口付け合うシルエットも、この都会では見えない。星より遠く感じる。
駅前にある食事処での送別会も終わって、とぼとぼと独りで歩く帰り道、少し迷った。大通りに出て行きながらも気分は落ち込む。
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