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草臥れて家路に就いた、瑠璃色の夜更け。柊の庭木のある実家の玄関の引き戸を開く。
すると、階段から駆け寄る足音があった。
「霧葉、おかえり。送別会、どうだった?」
花束を抱えて白ワインを手土産に帰れば、心配そうに兄嫁が出迎える。笑顔を作った。
「ただいま、紫。疲れた。飲み直さない?」
エプロン姿の新妻は、紙袋を受け取った。頷いて肩までの髪を結んだ姿は見返り美人。
頼りない兄貴も出来た嫁を貰ったものだ。何も言わないでも、摘みを用意してくれる。しかし切れ長の目を細め、紫は眉を下げた。
「疲れたって、それだけ? 感慨はないの」
三年ほど勤めていた都心での仕事を辞め、送別会も終わり、帰ってきたところである。だが口を結び、何も言葉を返せずに弱った。
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