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だけど冬依の機転で部屋番号が明らかになり、春一は先に部屋に乗り込むことが出来たのだ。
ちなみに、鈴音が持っていたボールペンは盗聴器になっていて、春一はずっと男と鈴音たちの会話を聞いていた。
危険があれば、時と場所を選ばず、飛び込んでいけるようにだったが、それが功を奏した。
「鈴音も、バッグを落として時間を稼いでくれただろう。あれもすごく助かった」
続いて、鈴音も褒めてくれた。
すると春一からの賞賛を独り占めできなかった冬依が、
「そういえば鈴ちゃん、肝心のボールペンを拾わずに行っちゃうところだったけよね」
恨めしげに言う。
「夏兄が大好きなんて言うしさ」
「そんなこと言ってないし、第一あれは、冬依くんがひとりで行こうとするから、慌てたんだからね」
今度は冬依と鈴音のケンカだ。
ポツンとひとり取り残されてしまった秋哉だったが、春一はふわりと笑った。
「秋哉も、しっかり廊下で見張ってくれたから、俺たちの姿は誰にも見られていない。事情聴取を受けずに済んだのも、秋哉のお陰だな」
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