53人が本棚に入れています
本棚に追加
置いてけぼりにされたのは秋哉である。
後半は、浅黄の視界にも入っていなかった。
ポカーンと口を開けて、ふたりの背中を見送る秋哉に、
「秋兄ドンマイ」
冬依がポンと肩を叩いた。
「ドンマイ」
テッペーも乗っかった。
「何がドンマイなんだよ!」
秋哉ひとり、いきり立って怒っていた。
ぐったりした顔で、秋哉と冬依が帰宅すると、
「ふたりともいいところに!」
と鈴音が玄関にすっ飛んできた。
あれからカズエを呼び出し、平謝りに謝って、ようやく許してもらえた次第である。
本当のところ、もうベッドにもぐり込んで寝てしまいたい。
しかし鈴音の様子もただ事ではないので、
「今度はなんなの?」
冬依はヤレヤレと肩をすくめた。
こっちこっちと鈴音は先に立って手招きしている。
「早く来て。夏樹の様子がおかしいの。私じゃ返事もしてくれないから、冬依くん呼びかけてみてくれない」
「えー、面倒くさいよ」
訳のわからない事態に振り回された冬依は、もう十分疲れているし、
「……」
巻き込まれて、オマケに振り回されまくった秋哉はもっと疲れている。
最初のコメントを投稿しよう!