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でも鈴音がすがる眼差しで見つめてきて、
「お願い」
と頼んでくるので、
「ナツキ、いい加減にしろよ!」
力任せに蹴りつけたせいか、それとも最初から鍵がかけられていなかったからか、ドアは、ギーッと音をたてて内側に開いていく。
抵抗なくゆっくりと開いていく様に、逆に秋哉はギョッとして、一歩二歩と後ずさった。
「……」
部屋の中からは何の物音もしない。
不気味なくらいの静けさだ。
3人はそーっと首を付き合わせて部屋の中を覗いた。
「夏樹!」
「夏兄、どうしたの」
鈴音と冬依が同時に叫び声をあげた。
夏樹がまるで行き倒れたかのように、ベッドの上に倒れていたからだ。
その時、息を荒くして走っていたのは春一だった。
街はクリスマスのイルミネーションに溢れ、煌びやかに輝いている。
だが、そんなものはちっとも目に入ってこない。
時刻は22時。
予定よりも早くに仕事が終わった。
今頃、鈴音たちが家でクリスマスパーティを開いているはずだ。
急げば間に合うかもしれない。
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