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まさか、こんな時間に仕事が終わるとは思わなかったから、期待させても悪いと、今夜のパーティの参加は断ったのだが、こうやって帰ったら喜んでくれるだろうか。
右手にぶらさげている袋には、コンビニのスイーツが入っている。
ケーキもチキンも予約者限定で、まったく手に入らなかった。
勤めている出版社の雑誌では、豪華なディナーの紹介とか彼女が喜ぶプレゼントだとか、鈴音が喜びそうなものならたくさん特集していたのに、そのどれひとつも用意することが叶わなかった。
婚約者と迎えるクリスマスの夜だというのに、春一はこの体たらくだ。
ただただ、不甲斐ない。
でも、
「おかえりなさい春さん」
鈴音はいつだって笑顔で待っていてくれた。
もしかすると今夜は、パーティの料理が足りないと、少し困った顔をするかもしれないけれど、それでも、鈴音は笑ってくれるはずだと信じている。
だから春一は帰路を急ぐ。
ディナーとプレゼントなら、後でいくらでも取り返せるはずだと、精一杯自分を励ましながら足を動かす。
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